沖縄県企業局連続給水20年記念座談会

平成26年3月1日、沖縄県企業局による水道用水連続給水が満20年を迎えます。
現在では、栓をひねれば水が出てくることが当然のように思われていますが、以前は長期の渇水に苦しみ断水を余儀なくされた時代が続いていました。また、離島の渇水対策や給水体制の広域化など解決しなければならない問題は少なくありません。連続給水20年という節目を迎えた機会に、県民のみなさまに渇水の歴史や水源開発の道のり、安定供給の意義に関する知識を深め、水の大切さを再認識していたいだくため、県内の水事情に詳しい関係者を招き座談会を開きました。

司会

米田善治(県企業局企業技術統括監)

出席者

神谷大介(琉球大学工学部環境建設工学科助教)
北牧正之(内閣府沖縄総合事務局北部ダム事務所長)
金城義信(県企業局OB元技監)
大城玲子(県環境生活部県民生活統括監)


米田
 県企業局は、本土復帰と同時に水道公社から事業を引き継ぎ、沖縄本島の22市町村と離島1村に対して水道用 水を供給してきましたが、復帰直後は少雨傾向が続くと、水源の不安定さから制限給水に至るということが毎年のように発生しました。本土復帰の昭和47年か ら平成6年まで、延べ1,130日の制限給水を余儀なくされました。
現在では、多目的ダム建設などの水源開発が進み、安定的に水道水を供給できるようになりました。
まず、水源開発について、沖縄総合事務局の北牧さんにお話を伺いたいと思います。企業局が水源としているダムは10ありますが、そのうち8つまでを国が管理しています。

北牧
 本土復帰当時、水不足が慢性化していた沖縄の地域振興を図る上で、安定した水資源の確保は最重要課題の1つでした。国が多目的ダムの建設及び管 理を行えるのは1級河川だけでしたので、2級河川しかない沖縄でも国がダム事業を実施できるよう沖縄振興開発特別措置法の中に河川法の特例を設けました。 そして、米軍工兵隊によって当時建設途上にあった福地ダムを継承し、昭和49年に完成させました。
その後、北部を中心にダム建設を進め、新川、安波、普久川、辺野喜、倉敷、漢那、羽地、大保ダムを完成させ、県管理に移行した倉敷ダムを除く8ダムを国が管理しています。さらに、今年4月の供用開始を目指し億首ダムの建設を進めています。

米田
 ダム開発で沖縄が他県と比べ異なる点や困難な点はありますか。

北牧
 沖縄本島は、年間降水量で全国平均を上回っていますが、人口密度が高いため、人口1人あたりの水資源賦存量(降水量から蒸発散によって失われる 水量を引き、残りの水量に面積を掛け、それを全人口で割った値)は全国平均の6割程度です。一方、沖縄の河川は短く急こう配であるため、降った雨はすぐに 海に入ってしまう上、流域も小さく、雨が降ったときの流量と普段の流量にかなりの差があるため、そのままでは水資源として利用が難しい状況にあります。そ こで、河川水を安定的に利用するためには、ダムなど水を貯める施設を整備する必要があります。
しかし、細長い沖縄本島では地形的にみてダム建設適地は限られ、本土ではあまり例を見ない、海岸近くや台地にも建設しています。億首ダムは海岸から2キ ロほどしか離れていません。また、通常はダムの堤体をつくれば水がたまるのですが、沖縄では地形的な条件から、本ダムとは別に更に脇ダムをつくったりしな ければならないこともあります。地質的な条件からダムを工夫して建設することもあります。例えば通常はロックフィルダム(石や岩を積み上げるダム)とコン クリートダムは別々の形式ですが、辺野喜ダムは両者を連結した複合ダムです。
さきほど触れました福地ダムは最初、米国基準でつくられていたのですが、本土復帰で日本側が引き継ぐことになり、今度は日本の基準に適合するように計画を変更したということもありました。
あと、ダムの事業用地が米軍基地に重なっているということもあります。その場合、基地内における施工となるため、立ち入りが制限されるなど、米軍など関係機関と綿密に協議・調整しなければなりません。

米田
 ダムを管理していく上で、今後の課題などありましたらお願いします。

北牧
 沖縄本島都市用水の約7割は、国が管理するダムから給水されていて、水の安定供給の要になっています。沖縄のダムは比較的新しいですが、いずれは老朽化の問題がやってくるので、施設の更新や長寿命化を適切に進める必要があります。
また、異常豪雨や渇水が起こっていますので、気候変動による影響を見据えて運用管理に努めなければなりません。災害が起きたときにどう対応するか、復旧対策をどうするかという危機管理も重要です。

米田
 環境対策はどうですか。

北牧
 ダム建設は環境に与える影響が大きいですから、かなり綿密に検討しながら進めています。まずは、有識者からなる生態系検討委員会をつくり、保全 対策を考えます。例えば、ノグチゲラの保護のために人工営巣木の開発・設置をしたり、沖縄本島では絶滅したリュウキュウアユを福地ダム湖に放流して再生・ 定着を図ったりしています。下流河川では、ダムができると流量が減って藻類が更新できなくなる場合もあるので、そういうときには少し流量を増やします。川 の掃除をするという意味合いで、フラッシュ放流をします。あとは、水質などを含め継続的に調査し、問題がないかどうかモニタリングしています。環境対策 は、沖縄の特殊な環境を考慮し、全国的にみても先進的な取り組みをしてきたと思います。

金城
 フラッシュ放流はどのダムで、どういうふうにやっているのですか。

北牧
 福地ダムと羽地ダムでやっています。河川流量を一時期、調整して少し水をため、その水を放流するなど、企業局と調整しながら実施します。

金城
 生態系との関係で、どのくらいの規模で、いつするのが望ましいのでしょうか。

北牧
 調査をしながら試行錯誤しながらです。例えば、藻類がどの程度更新されているか確認します。最初は少なめに実施して、この程度ならば更新されているという量を見定めます。

米田
 次に、企業局独自の水源開発に話題を移したいと思います。西系列水源開発事業など、大河川のない沖縄ならではの素晴らしい取り組みがありますので、元企業局技監の金城さんから説明していただけますか。

金城
 西系列水源開発事業は、国による多目的ダムの建設と並行して企業局の第3次拡張事業の一環として昭和55年度に開始し、30年の歳月をかけて平 成21年度に完了しました。事業内容としては、西海岸に面した沖縄本島北部の4市町村内にある12の小規模河川から、豊水時に海に流出する余剰水を、河口 付近に堰を設置して取水し、北部の大保ダムや中部の倉敷ダムまで導水して貯留した後、北谷浄水場などの水源として利用するというものです。
建設された主な施設には、取水ポンプ場12か所、それに、北部から中部まで水を運ぶ途中で圧力を上げる増圧ポンプ場3か所、大保ダムと倉敷ダム、132 キロに及ぶ導水路幹線などがあります。総事業費は約1,236億円で、1日あたり9万8,200トンの水源を確保しました。
沖縄本島においては、大きな水源が集中する北部から消費地域の中南部へ水を引っ張ってくるには、福地ダムから東海岸を通る東系導水施設がありましたが、 新たに西系列導水施設が完成にしたことにより、ライフラインが二重化され非常に効率的になりました。さらに、東西導水施設を連結することで水源水量の相互 融通が可能になり、災害に強い安定した施設となっています。
施設の特徴としては、導水路延長が非常に長く、技術用語ですが、「損失水頭」が高くなるため、途中に増圧ポンプ場を設置したことや、名護市内あたりに圧 力管のトンネルをつくったことがあります。また、12か所もポンプ場があり管理が大変なため、場内に設置した工業用テレビで24時間、施設の安全を見守 り、水質の監視や施設の運転制御のために遠方監視制御設備を導入していることや、取水堰は洪水時に臨機応変に対処できるように可動式といって、ゴムででき た堰が倒れる仕組みになっていることも挙げられます。

米田
 金城さんは企業局で水運用を預かる配水管理課長として渇水対策に取り組んでこられましたが、渇水の歴史を振り返って特に記憶に残っていることがあればお話しいただけないでしょうか。

金城
 昭和56年7月から57年6月にかけての326日間におよぶ断水記録は現在でも、わが国の水道界におけるワースト記録になっていますが、この期間中、どのような渇水対策に取り組んだか、どのような苦労話があったかなどをご報告したいと思います。
当時、最初は夜間の10時間断水から入りましたが、節水効果が上らず、断水時間を延長して隔日給水、つまり24時間断水にして24時間水が出る状態にし ました。一番厳しいときには、隔日20時間給水、つまり48時間のうち20時間、1日に10時間だけ給水するということになりました。
私は企業局の配水課長の職にありまして、給水制限実施計画の策定、国のダムを管理する沖縄総合事務局との調整、市町村との協議、県議会やマスコミ対策など日夜厳しい業務に追われて、水道人生の中で一番つらい時期でした。
新聞では毎日「渇水は天災だが、水道の水が出ないのは人災だ」「お天気任せの水道行政」などの記事が紙面を賑わせていました。また、県民からは不公平給 水、赤水と衛生対策、学校給食の献立変更、学校への水筒持参、プールの使用禁止、病院や福祉施設における水の確保、観光客やホテルに及ぼす影響など、毎日 のように苦情や意見が寄せられ、その対応に追われました。私は、毎朝、断水に関する新聞記事やテレビ報道を見るのがとても怖かったです。
緊急水源をどう確保するかですが、国管理ダムからの緊急補給、北部河川維持用水の一時転用、人工降雨、西表島や鹿児島県屋久島からの水輸送に関する調査などを行いました。中でも印象に残っているのが人工降雨です。
昭和56年10月18日、当時の嶺井企業局長と2人で海上自衛隊那覇基地に出向き、第5航空群のP2J対潜哨戒機に乗りました。当日の天気は晴れ。本部 半島の上空にある雲を目指して飛び、この雲の中に散水して人工的に雨を降らせようとしました。約2時間の飛行で計6回の散水をしましたが、地上に降り立っ たときに命の無事を確認しほっとしました。
残念ながら地上での降雨を確認できませんでした。その後6か月の間に11回の人工降雨を試み、そのうち2回は降雨の増量を確認できました。

北牧
 東京都の水源である小河内ダムでは、地上からヨウ化銀を噴霧して人工的に雨を降らせようとしましたが、このときは何も混ぜずに水だけをまいたのですか。

金城
 私も小河内ダムには2回ほど行ってきました。あそこでは確かにヨウ化銀をまきます。データを参考にさせてもらったのですが、沖縄ではすぐ周囲が海である ため、ヨウ化銀をまいても風に飛ばされて海に行ってしまい、命中率が低いのです。このため直接雲の中に散水する散水法を選んだのです。

米田
 次に、研究者の立場から県全体の水源の確保、安定供給について神谷先生にお話しいただきたいと思います。

神谷
 現在の沖縄本島の生活や経済は、安定的に水が供給されるという前提で成り立っています。水道を含め水供給のシステムを考えた場合、このシステム が不安定な降水に依存していることは明らかであり、渇水リスクがゼロになることはまずありえません。安定化をしようとして、これ以上、ダムをつくったとし ても、海水の淡水化をしたとしても、リスクが残っています。
この事実を踏まえ、渇水の確率を減らし、実際に起きたときの被害を小さくするという取り組みが必要不可欠です。それも、水道管理者だけでなく、水道水、 農業用水など水を使用するすべての人が計画に参画できる枠組みを、本島だけでなく離島も含めてつくらなければならないと思います。
人口増加が渇水のリスクを高める要因になりますが、復帰以降、生活のスタイルが変化したこともリスクにつながっています。観光客の増加も大きく影響しているでしょう。
観光振興をすることによって、給水と排水の問題、およびゴミ発生と処理の問題が出るのは沖縄だけでなく世界共通の現象です。特に人口に比べ観光客の多い 地域ではかならずこの2つが問題になります。沖縄では観光客1人あたりどのくらいの水を使っているのか調べてみますと、すごくばらつきがあるのですが、1 人1泊あたり500リットルから、多いところでは1,500リットル、ホテルで使っています。大きなリゾートホテルで循環水を使っていないところは 1,500リットルぐらいになります。
ある離島で数年前に調査しましたが、ダイビングショップと民宿で使っている水を観光客数で割った、観光客1人あたりの使用量は、それ以外の使用量を島の 人口で割った、一般住民1人あたりの使用量の2倍から3倍になっていました。観光を振興すると、それだけ水を使うということを表しています。
沖縄県全体で1,000万人の観光客を目指していますし、離島の場合、主要産業だった農業が衰退し若者が離れていく中、観光振興をして島を盛り上げよう としています。沖縄では観光は重要な産業ですが、観光振興をすることによる影響、渇水については目を向けなければなりません。今後の自然条件として、少雨 多雨が増えることはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)や気象庁の報告から明らかですから、どういう水の使い方をする社会をつくっていくかは、特に 離島の場合、住民と一緒になって考えていかなければならないでしょう。
もちろん、海水の淡水化で水をつくるのも1つの選択肢でしょう。ただ、海水の淡水化はかなりエネルギーを使い費用がかかるため、水道料金が那覇の3~4 倍にもなります。一般的には所得が低いといわれる離島で、水道料金が高いという仕組みになってしまいます。沖縄全体としても、私の出身地の関西に比べる と、かなり水道料金が高いと感じます。
観光振興は必要ですが、その影響を直接受ける水の部分について十分考えなければならないと思います。

米田
 どういう観光を目指すべきでしょうか。それとも観光に見合う水資源開発を目指すべきでしょうか。

神谷
 水資源から見て社会システムの容量、観光客だけから見れば観光の容量があるはずです。特に島の場合、水の問題は非常に重大な制約条件になるので はないかと思います。だからといって観光振興をするなという意味ではありません。どういう観光振興をするのか、どういう社会システムをつくるのか、どうい う水資源開発をするのかが重要になります。
小規模な島では、ダムをつくれるような場所はほとんどありませんし、地下水をくみあげれば、少雨のときには海水が入ってくるので、地下水もあまり使えま せん。海水の淡水化は1つの案ですが、観光にかかわっていない人の水道料金も高くなってきます。生活に絶対に必要なものの料金が上がり、しかもお年寄りの 家庭の負担になることも考えなければなりません。島として受け入れ可能な観光客数というものがあるでしょう。
別の考え方として、観光客に水の使い方を伝えることもよいのではないかと思います。海外の例ですが、ダイビングの後に浴びるシャワーは海水です。目的は 砂を落とすことなので、2回、3回潜って1日の終わりに真水で流す。日本ですと、1回水で流してお昼ご飯を食べてもう1回となります。そういうダイビング ができるところはいいですが、水資源が限られている島では、少々不便ですが、水を大切に使うことが、島の自然や環境を守ることにもなると理解してもらう。 これも1つのやり方です。
また、入島税、入島料という言い方がよいか分かりませんが、その島で遊ぶことは、島に負荷を与えるという意味で、料金的な負担を求めることは議論をする価値はあると思います。

米田
 離島の負担を軽減するには、どのような方策が考えられますか。

神谷
 沖縄では、電気、ガス、水道、すべてが高いという印象があります。特に水道は生きていく上で欠かせないものですから、安い価格で安定して供給することは生活保障として必要だと思いますが、実際には、海水の淡水化をしているところでは水道料金が非常に高くなっています。
社会のあり方として、みんなの幸福を最大にする、幸せの総和を最大にするという考え方がありますが、そうではなく「最大不幸の最小化」という考え方もあ ります。最も不幸な人、最も恵まれていない人、例えば、水道料金が高くて水を使うことに困っているところを助けてあげることです。沖縄の「ゆいまーる」に あたるかもしれません。幸せの総和を最大にするならば、人口の最も多い本島の人を幸せにすればいいことになりますが、いろいろな島から構成されている沖縄 では、「最大不幸の最小化」という議論も必要になってくるでしょう。
離島の水道事業を見渡しますと、小規模の事業が多いことが特徴として挙げられます。1つの自治体が複数の島からなる場合、複数の水道事業を抱えていま す。その場合、自治体の規模が小さいですから、複数の水道事業を1人の担当者が全部みなければなりません。海水の淡水化や地震対策など水道に関する技術が どんどん高度化している一方、担当者が1人しかいないため、島を離れられず勉強する機会もない。技術が高度化しても島の担当者、水道システムがそれについ ていくことができなくなります。
これに対して、もし水道事業の広域化によって、複数の担当者が複数の事業をみるという体制になれば、誰かが学びに行くときは誰かが代わりを務めることが できます。また、これによってほかの市町村が運営する水道事業の実態を知ったり、1つの水道事業を複数の技術者がみたりすることになり、よりよい事業運営 のアイディアが出てくるでしょう。
困っている自治体どうしでは融通することが難しいので、さきほど触れた「最大不幸の最小化」や「ゆいまーる」を目指すとすれば、余裕がある沖縄本島が、 ほかの小さな島をみてあげるべきでしょう。県内全体の水道のレベルが上がり問題も改善されます。このように、お互いに助け合うという意味の広域化は必要だ と思います。

米田
 水道事業の広域化というお話が出ましたが、県環境生活部から「沖縄水道ビジョン」が公表されています。沖縄の水道が抱える課題に対して、水道事 業の広域化の第1ステップとして企業局の用水供給事業を周辺離島まで拡大するという内容です。これについて、県環境生活部県民生活統括監の大城さんから説 明をお願いします。

大城
 本土復帰以降、沖縄振興開発計画に基づく国のご支援や水道関係者のご尽力によって沖縄の水道事情はかなり改善しました。本県の水道普及率は復帰時に89.2%でしたが、平成15年度にはほぼ100%を達成し現在に至っています。
一方、一部離島においては今なお制限給水が発生したり、高コストの海水淡水化施設による水源の確保を余儀なくされたりしています。小規模な離島では、高 コスト構造の事業運営にならざるを得ず、本島に比べ水道料金が高いという状況が起きています。また、往々にして財政基盤がぜい弱なこともあり、水道技術者 の確保や老朽化施設の更新などの課題を抱え、水道サービスに地域間格差が生じています。
このような状況を踏まえ、県では平成24年4月、「沖縄県水道整備基本構想」を改訂し「沖縄県水道ビジョン」を出しました。この「ビジョン」は、「安全・安心の水道水を安定的に将来にわたって供給できる水道事業の構築」を基本理念とし、その理念達成に向けた方策の1つとして「水道広域化の推進」を掲げています。
実現のためには、水道行政をあずかる県、広範に水道供給事業を行う企業局、関係市町村が一体となり県民の理解を得ながら進めることが重要だと考えていま す。県では企業局に協力してもらい、関係部局で「水道広域化検討ワーキングチーム」を設置して、広域化のための課題の抽出や対応策の検討に取り組んでいま す。
平成24年度から「水道広域化推進事業」を環境生活部で実施しておりまして、県内の簡易水道の運営状況などを調査しています。この調査結果を踏まえ、まず、本島周辺の小規模な離島において、財政的な課題や技術的な課題に対する最も有効な解決案は、企業局の用水供給事業の拡大にあるとして、企業局や関係部 局と検討しているところです。

米田
 広域化を進める上で、企業局に期待される役割は何でしょうか。

大城
 復帰以降、企業局の給水対象は拡大して23市町村になり、全体の給水量でも80%をカバーしています。県内随一の技術力を持ち、財政基盤もしっ かりしています。広域化を進める上で、県とともにぜひ中心的な役割を担っていただきたいと考えています。さきほど申し上げました、本島周辺の小規模な離島 で進めている広域化についても、各種調査、分析、助言などで企業局に協力していただいています。
広域化への課題は、対象となる市町村だけでは解決できないことが多いので、私ども県、企業局、関係市町村、全体で取り組んでいくべきだと思います。具体 的には課題の共有化や課題を検討する場の設定を考えていますので、企業局には県と協働して取り組むパートナーとしての役割を期待しています。

北牧
 広域化にあたっては、沖縄本島と離島をパイプラインで繋げる事もあり得るのでしょうか。

大城
 まず本島周辺の離島を対象に考えていますので、パイプラインはコストがかかりすぎて難しいと思います。例えば、離島では、自ら、水をつくるところからやっているのですが、企業局に浄水場の運転や技術面でのカバーをしていただくなどの案を検討しています。

米田
 沖縄本島において、水道水の安定供給が図られ20年間、制限給水することなく連続給水を継続できたのは、県民をはじめ水源地のみなさま、関係者のみなさまのご努力のおかげです。企業局としましては、今後も安定的に安全で安心な水道水の供給を心がけたいと考えています。
一方、離島ではまだまだ、こうした恩恵にあずかれず、断水に悩まされ苦しい状況にあることは、企業局として認識しております。広域化に向けて、県や受水事業体と協力しながら進んでいきたいと考えています。
また、この20年間、沖縄本島でもまったく問題なかったかといえば、そうではなく、平成14年、16年、18年、21年は、少雨やカラ梅雨、あるいは台 風が来なかった、などの影響で非常に厳しい状況でした。特に平成21年には、企業局長から総合事務局の方までみんなが外に出てビラを配ったり垂れ幕を掲げ たりして節水を呼びかけました。計画されたダムはすべて完成しましたが、降雨がなければ、危機的な状況は繰り返されます。今後とも、県民のみなさんに節水 のご協力をお願いしなければならなくなるかもしれませんが、何としても断水することなく給水を続けられるように頑張っていきたいと思います。
では、最後に、これまでのお話を踏まえ、感じたことや伝えておきたいことがあれば、お願いします。

北牧
 さきほどの離島のことが印象に残ります。公共事業でも、投資に対してどれだけの効果が出るのかという費用対効果が求められ、なかなか過疎地の事 業が進まないという面があります。神谷さんが言われた「最大不幸の最小化」は重要なテーマだと思います。 言い忘れたことですが、北部のダムは単独の運営 では効率がよくないので、導水路で連結することによって効率を上げています。これもあまり本土で行われていないことです。福地、新川、安波、普久川、辺野 喜の5ダムを連結することによって20%ぐらい有効な水源が生まれます。
あと、良質な水の供給を続ける上でも、水源地である北部の自然を良好な状態に保つことは重要です。そういう意味でも、県全体としてもっと北部に目を向け ていく必要があるのではないかと思います。例えば、水源地と消費地の交流会など、水源地域の豊かな自然を体験しながら水の大切さを学ぶ取り組みが考えられ るでしょう。
最後に、国のダム事業が完了するにあたり、企業局をはじめダム事業にご協力いただいた皆様方に感謝申し上げます。

神谷
 高度経済成長時代から、効率性が問題にされてきましたが、ある程度成長した時点で、公平性や社会的公正についての議論が必要になるのではないか と思います。また、これから給水管や排水管の更新時期を迎えますが、人口減少社会における施設の更新は厳しい問題となります。民間企業ならば、もうかる時 にお金をためて次の施設更新のとき使うこともできますが、公営企業の場合にはそれが難しいでしょう。そのため、用水供給だけでなく、末端供給も含めた広域 化について考える必要性があるかもしれません。
あと、水源地を守ることですが、水源の水質がよければ、浄水のコストを下げることになります。さきほど「水道ビジョン」に触れていましたが、できれば、 ダムだけでなくこの島の水全体をどう使っていくか、どう守っていくか、県民みんなが考える場をつくっていただきたいと思います。

大城
 本島において、水源開発が進み安定供給が確保され、20年間断水がない状態が続いていることは、国や水道関係者のご尽力によるものであり、この ご努力に対して敬意を表したいと思います。さきほどご紹介しました「沖縄水道ビジョン」につきましても、まだ議論は始まったばかりですが、本島だけでなく 離島を含めた沖縄全体の水道の改善に向けて、観光はどうあるべきか、水需要はどうなるか、など将来の構想や見込も含めて考えていくべきだと改めて感じまし た。本島において、水源開発が進み安定供給が確保され、20年間断水がない状態が続いていることは、国や水道関係者のご尽力によるものであり、このご努力 に対して敬意を表したいと思います。さきほどご紹介しました「沖縄水道ビジョン」につきましても、まだ議論は始まったばかりですが、本島だけでなく離島を 含めた沖縄全体の水道の改善に向けて、観光はどうあるべきか、水需要はどうなるか、など将来の構想や見込も含めて考えていくべきだと改めて感じました。
さきほど観光の話が出ましたが、せっかくリゾートに来たのだから、倹約してまで水を使いたくないという見方がある一方、離島においては環境を大切にするという視点で観光の組み方を考えるというのも1つの案ではないでしょうか。
一足飛びに考えるのではなく、将来の予測をたて大きな視点で取り組むことが必要でしょう。まずは、特に課題の多いところから段階的に進めることになりますが、県民のご理解をいただき、企業局、水道関係者のみなさまにご協力をお願いしたいと思います。

金城
 離島県沖縄では、長年にわたって厳しい渇水を経験し、断水による苦しい生活体験を余儀なくされてきた歴史があります。この歴史を今一度あらゆる 角度から検証して後世の人たちに引き継ぐ必要があります。沖縄県民の四十歳以下の若い人々には断水の経験がほとんどありません。蛇口をひねれば、いつでも 安全な水が出ることが当たり前になり、多くの県民は水道に対する関心が薄れてきたように思います。しかし、今後とも断水が起きないという保証はありませ ん。事実、昨年の夏には、干ばつに襲われた座間味島と久米島で夜間断水が実施されました。
水道事業においては、異常渇水や地震、津波など自然災害に対する安全対策、水質事故や漏水事故、テロなど人為的な災害に対する危機管理、老朽化した施設 を更新し機能維持を図るといった諸施策を行っていかなければなりません。これらの課題は水道関係者だけが一生懸命頑張るだけでは解決できません。世論を喚 起し県民や議会の理解と協力を得なければならないでしょう。
水道の使命は、いつでも、どこでも安全で安定した水量を供給することであります。今後とも県民に信頼される水道を目指して、企業局連続給水記録100周年を達成されることを期待しております。

米田
 中国の故事に「飲水思源」という言葉があります。これは、水を飲むときは常にその源を思いなさいという意味です。今日まで消費地である本島中南 部へ水道水が供給できたは、水源地のみなさまのご理解、ご協力があってこそです。あらためて水源地をかかえる本島北部のみなさまに感謝の意を表し、この座 談会を閉めたいと思います。本日はありがとうございました。
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